2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

村に電気がきた

村に電気がきた 私が小学二年の春頃から、作業服を着た見慣れない男の人が三、四人であちこちの田圃や畑の中に、太くて真っ直ぐな柱を立てては黒い線を引っ張って、柱と柱をつないでいた。 電気という明るい物が入るので、もうランプは必要がなくなるとの話…

葉煙草作りの総仕上げ

その一 葉煙草のし 葉煙草栽培の農家では春蒔きの仕事が一段落すると、葉煙草のし(葉の皺を伸ばす作業)をして、専売局へ納付の準備をしなければならなかった。 乾燥してしぼんだ葉は、乾かし過ぎるとぼろぼろに砕けてしまうので、適度に霧吹きで全体を湿ら…

村の四季 芋掘り 麦蒔き

芋掘り 祭りの興奮も去って、朝夕肌寒さを覚えはじめる頃になると、山の落葉樹は紅や黄色にそれぞれ衣替えして、松や杉、桧など、交互に色どられ、秋が次第に深まってくる。 畑に取り残されていた煙草の軸も取り払われて、次は芋掘りの季節である。 あの真夏…

村の四季 村祭り

村祭り 煙草の乾燥もおおかたは終わり、忙しい稲刈りも一段落した十月二十五日は、村を挙げて毎年行われる氏神様の大祭の日であった。 鎮守様は「境の宮神社」で私の家から三キロ半くらい離れていて、小学校へ往復する途中にある。お祭りの大きな催し物はや…

村の四季  運動会には仕事を休む 

運動会には仕事を休む 二学期が始まり九月の下旬頃、農家も仕事が一段落と言う時期に、小学校では秋の運動会が行われた。 何の娯楽施設とてない山村の人たちは、お弁当持参でこの日ばかりは仕事を休んで見物に行く。特に今年は私の初めての運動会なので、父…

村の四季  葉煙草作り2

その三 自然の恵みの水 ひと休みすると、いよいよ煙草の虫取りが始まる。全員が家から持ってきた古着のシャツとズボンに着替え、手拭で頬かむりをして古い麦わら帽子をかむり、煙草の脂(やに) がついてもいいような恰好となる。まるで案山子(かかし)そっくり…

村の四季 葉煙草作り1

その一 虫との戦い 夏休みに入る七月の終わり頃には、葉煙草がもう一メートル以上に伸びて葉が大きく茂り、毎日虫取りに忙しくなる。 我が家は葉煙草作りの農家である。あんなに苦い煙草の葉が、虫にはどうして美味しいのだろうかと不思議に思う。殺虫剤など…

想い出のふる里3

あこがれの一年生 大正天皇が崩御された翌年の昭和二年、私はもうすぐ小学校へ上がれるので、胸ときめかせてその日を待っていた。 いよいよ四月六日は入学式である。仕立て下ろしたばかりの花模様の袷(あわせ)と羽織の上下対の晴れ着を着せて貰い、赤い鼻緒…

想い出のふる里2

囲炉裏が団欒の中心 私の家では台所の土間の横に「かまど」があって、これを「おくど」といい、夏の暑い間はそこで煮炊きをするので、囲炉裏はその上に板をのせて居間の一部として使い、寒くなるまで使わずに休ませ、十一月から翌年の四月頃までが囲炉裏の活…

想い出のふる里1

想い出のふるさと 昭和六十三年(1988年)四月、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋が完成して以来、私のふる里のすべてが大きく変化したが、ここには私が体験し、身にしみついた「想い出のふる里」を書いてみたい。まだ一度も行ったことのない孫たちの為に。 まず東…