村の四季  運動会には仕事を休む 

運動会には仕事を休む

 二学期が始まり九月の下旬頃、農家も仕事が一段落と言う時期に、小学校では秋の運動会が行われた。
 何の娯楽施設とてない山村の人たちは、お弁当持参でこの日ばかりは仕事を休んで見物に行く。特に今年は私の初めての運動会なので、父も乗り気で見に来てくれた。母は朝早くからお重詰めのお弁当を支度して、近所のおばさんたちと賑やかに学校へ集まった。
 私は去年東京の叔父から頂いた白地のワンピースを着て、わくわくして参加した。。一年生の女の子は着物で出ている子が多かったが、二年生以上は、上着は白の半袖服で下は紺のひだスカートだったように思う。
 いよいよ競技が始まり、一年生の種目は借り物競争だった。私が拾ったカードには、「ボウシ」と書かれていた。私は夢中で見物席前まで駆けて行き、カードを振りながら、「ボウシ、ボウシ」と叫んだ。
 一番前の席で見ていた父が「ホラ、この帽子、帽子」と、カンカン帽を差し出してくれたので、私は引ったくるように受け取って駆け出し、一着になった。
 お昼の時間には見物席へ割り込んで、近所の人たちと大勢で食べたお重詰めのいなり寿司や、ゆで栗の美味しかったことは忘れられない。
 最後の地区別リレーは、四区に分かれて学年から一人ずつ出るが、第一区の私の学年では女の子が三人だったが、その中では私が一番早いということで選手にされた。
 でも、他の地区の子が早くて、私は三着になったが、この時以来、小学校在学中ずっと第一区の選手を務めなければならなかった。
(村は県道に沿って細長い村なので、東から順に四地区に分けられていて、学校での行事を始め、村のいろいろの行事の時に区から代表者を選ぶことになっていた)


東京から来たおじさんのお土産の花柄のワンピースで運動会に参加した