2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

看護婦見習い時代 4 まずご挨拶から

まずご挨拶から 一日の仕事が終わって風呂から上がると本場さんが「ご挨拶に行きましょ」と階段を上がって二階の廊下へ座り、先生と奥様の居られる八畳の部屋の襖を開け、「寝ませていただきます」と両手をついて頭を下げたので、私もその通り「寝ませていた…

看護婦見習い時代 3 仕事のリズム

仕事のリズム 朝六時起床、大急ぎで布団を片付ける。なにしろ昼間の待合室が、夜十時過ぎの診療終了後、玄関を閉めると部屋中をクレゾール液で消毒して、私たち看護婦二人の寝室に早変わりするのである。 先生一家は二階で生活しているので、六時半には奥様…

看護婦見習い時代 2 回春堂医院 ②

翌朝、兄が勤めに出る時間に合わせて私も一緒に下宿を出た。村を出るときに母が入れてくれた着替え類の入った「手提げカバン」を一つ持って、昨夜の回春堂医院の敷居をまたいだ。生まれた時から何処へも行ったことのない「井の中の蛙」がおそるおそる町へ出…

看護婦見習い時代 1 回春堂医院 ①

1、回春堂医院 昭和十年(1935年)四月十日、私は徳島市医師会附属産婆看護婦養成所の看護婦科第一学年の入所式をおえた。 次兄が一年前から徳島県庁の学務課に勤めるようになり、徳島城跡の近くに下宿していたので、入所試験の時もその下宿に泊めてい…

恩師の言葉

恩師の言葉 昭和十年三月。小学校高等科二年を卒業するのもあと僅かというある日、担任の教頭先生がいつもの教壇に立ち、 「君たち、もうすぐ卒業だね。卒業したらどうするんじゃ、跡取りの長男、長女は家の仕事を継ぐのが当然だがそうでない者は、この狭い…

満州事変と上海事件

満州事変と上海事変起こる 1931年(昭和六年九月)満州事変が、翌年には上海事変が勃発していた。 押し寄せる世界的大恐慌の中で、農村はだんだんと疲弊して、青年たちは誰もが兵隊になることを望む世の中となってきた。 幼い五、六歳の男の子でも「おれ…